大阪高等裁判所 昭和33年(ラ)173号 決定 1958年12月05日
抗告人 公証人 大町和左吉
主文
本件抗告を却下する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
本件は神戸地方法務局所属公証人大町和左吉が、同公証人作成第九万二千百六十七号公正証書につき、債権者たる株式会社関西相互銀行より右公正証書の執行力ある正本一通の再度付与申請を受けたので、管轄神戸地方裁判所に対しその許可の裁判を求めたところ、同裁判所は右許可申請を却下したので、右却下決定に対し右公証人より当裁判所に抗告を申立てたものである。
およそ公証人が公正証書の執行力ある正本を再度付与するに当り民事訴訟法第五百六十二条により裁判所の裁判を得ることを要する場合の裁判所と公証人との関係は、恰かも同法第五百二十三条に於ける裁判長と裁判所書記官との関係と同様、国家機関の内部的関係にすぎないものであるから、特別の規定のない限り、右裁判に対しては公証人は抗告による不服を申立てえないものと解すべきである。そして公正証書の執行力ある正本の再度付与につき裁判所の許容の裁判を得られなかつた公証人は再度付与申請者に対してその付与を拒否すべきであつて、この場合申請人は公証人の右拒否に対する異議の方法によつて救済を求むべきである。(民事訴訟法第五百六十二条第二項類推)それ故抗告人である公証人よりする本件抗告は不適法であるから却下すべく、抗告費用の負担につき民事訴訟法第八十九条第九十五条に則り主文の通り決定する。
(裁判官 大野美稲 石井末一 喜多勝)